2021年のご挨拶

 こぶな書店はおかげさまで、3年目の春を迎えることができました。楽しい出会いと温かい応援を数多くいただき、感謝申し上げます。

 立ち上げの1冊目として2019年世界難民の日(6月20日)に刊行した小俣直彦著『アフリカの難民キャンブで暮らす』は、昨年2020年の同じく世界難民の日に、韓国のWonderbox社から翻訳出版されました。

 昨年は、思いもかけなかった新型コロナウィルスの感染拡大に見舞われ、日々それに関する報道が続く中、小惑星探査機はやぶさ2の帰還とJAXA宇宙飛行士・野口聡一さんの3度目の宇宙飛行のニュースに、心が空の彼方まで開きました。

 私は野口さんの著書の編集をさせていただいたことがあります。1度目の飛行の後に刊行された『宇宙においでよ!』(野口聡一・林公代 著)という本で、その際に野口さんがしてくださった、宇宙飛行士は同じ宇宙船に搭乗するメンバーに命を預け合っているというお話を、折々思い出します。

 1冊の本に関わるチーム――著者の他に、イラストレーターやカメラマン、ブックデザイナー、校閲者、印刷所のあらゆる工程に関わる方々、本によっては監修者もいます。販売や宣伝の担当者、流通取次の方、書店さん――も、宇宙船に乗っているのに似ている。

 そして最近思うのは、読者の方も一緒に宇宙船に乗ってくださっている、と。もしかしたら原稿が生まれた最初から、まだ見ぬ読者の方も一緒にいてくださっているのではないか……と、『アフリカの難民キャンプで暮らす』が出て、読者の方の声が聞こえて来たとき、そう思いました。既存の枠には居場所を見つけるのが難しく、この本の原稿を抱えて私が途方にくれていたあの時、もう見えないところに読者がいてくれたのだ、と。

 こぶな書店は昨年11月に2冊目の『誰かが見ている―楢喜八作品集』を刊行。今年は何冊かの企画を並行して進行中です。

 これからもぜひ、いろいろな宇宙飛行を皆様にご一緒いただければ嬉しいです。

  2021年立春   小鮒由起子

有明海 ムツゴロウから届いた新春のメッセージ
(撮影:田中克)