こぶな書店について

 フリー編集者として30年にわたり本の出版に携わってきた小鮒由起子が、2019年、小俣直彦著『アフリカの難民キャンプで暮らす』の刊行とともに立ち上げた『ひとり出版社』です。

 縁あって出会うことのできた小俣さんの原稿は、繰り返し読むほどに心に染み込んできました。
 そしてそれは、既存の枠には収まりきらない新しいタイプのノンフィクションでありました。ならば思い切って、読者の方への橋渡し(販売)も含め、新しい版元を立ち上げようと決意しました。
 販売は盟友であるヒマールに担当していただきます。ヒマールは、長年の編集者仲間でもあり、現在はジャンルを超えて「手仕事」「音楽」、そして「言葉」を伝える「場」をつくっています。本をつくることにおいて、私も「手仕事」ということを大切に考えてきました。版元立ち上げにあたり、ユニットを組むことを迷わずお願いした由縁です。

 こぶな書店は、一編集者の等身大の版元でありますので、沿革にかえて、これまで携わった本を「編集者・小鮒の仕事」のページに記します。

 過去数世紀にわたって人類が築き上げてきたHumanitiarianism(人道主義)は、膨張する不寛容さに追いやられ、今や片隅で肩身の狭い思いをしている——
 小俣さんの本にさらりと差し込まれた一文です。
 こぶな書店のロゴマークは、葉っぱの中に魚。これは橅(ブナ)と鮒(フナ)です。
 英語のhumanの語源は、地面や腐葉土を表すラテン語のhumusからきているという説があるそうです。「人は腐葉土のように他者を育む存在であれ」と。(私の一番印象深い仕事のひとつ、『鉄は魔法つかい』に拠る)
 森の腐葉土は、青い海と魚を育みます。すべては一本の苗木から——
 『アフリカの難民キャンプで暮らす』の帯のコピーは、“すべては「生」の「声」から”——
 刊行された時には小さな苗木のようである本が、ゆっくりと大きな木に育つことを祈りつつ一冊一冊をつくっていきたく存じます。

                                                                   小鮒由起子