難民を巡る報道はここ数年増えているが、その多くは政治的な視点からのものだ。長期に渡って現場に入り、地に足の着いた目線で「生」の声を丹念に拾っていく手法で「等身大の難民像」を記録し、問題点を浮き彫りにしていることに感服した。
401日もの長い間、定点で現場に入る取材活動は、テレビや新聞、通信社に所属するサラリーマンジャーナリストには不可能だ。フリーランスでも難しいだろう。そういう点では、学術研究という目的があって初めて実現したフィールドワークだと思う。そのチャンスを活かして、論文作成だけに終わらずに、ノンフィクションも執筆した背景には、調査対象となった人々のために少しでも役に立ちたいという小俣さんの強い思いがあると感じた。
ーーー加藤昌宏さん(放送局プロデューサー)